渋川動物公園の名を一躍全国区へと押し上げた出来事といえば、2017年8月に発生したアルダブラゾウガメ「アブー」(当時体重約55kg、メス)の脱走事件です。園の入り口付近を日課として自由に散歩していたアブーが忽然と姿を消し、園長自らが「発見者には懸賞金50万円を手渡しする」と公表したことで、ワイドショーやSNSは連日大騒ぎとなりました。
当時、園側の管理体制に対する批判や「誰かに連れ去られたのではないか」という憶測が飛び交いました。しかし失踪から16日目、園からわずか直線距離150メートルほどの山中の茂みで、地元在住の親子によって無事発見されます。関係者や当時の捜索記録が示す真相は、事件性のある誘拐などではなく、「のんびり歩くカメが草木を食べながら山中深くへとマイペースに進んでしまった結果、木々に遮られて発見が遅れた」という純粋な迷子事故でした。
騒動から歳月が流れた2026年現在、アブーはどうしているのか。体重もさらに増加し、甲長約1メートルを超える堂々たる体躯に成長したアブーは、現在も園内の人気者として悠々自適に暮らしています。事件直後は脱走再発防止のために敷地境界への強固なフェンス増設や監視カメラの導入など、物理的・運用面での安全対策が徹底的に刷新されました。現在では放し飼いエリアの動線管理が厳格化されつつも、来園者が直接背中に触れたり記念撮影を行ったりできる穏やかな日常が守られています。「一度は日本中をハラハラさせたあのカメが、目の前でのんびり小松菜を頬張っている」――その平和な光景に、多くのリピーターが安堵と驚きの声を寄せています。