※ここからは物語の核心・結末に関する重要なネタバレを含みます。
警察の包囲網を嘲笑うかのように、水野は藤千代のために巨額の資金を注ぎ込み、大手劇場での独演会「情炎」の開催にこぎつけます。自らの正体を明かして警察に出頭した水野は、「藤千代のリサイタルを無事に終えさせること」を条件に自供を約束しますが、警視庁上層部はガス人間を社会的に生かしておくことは危険すぎると判断。劇場ごと彼を葬り去る極秘作戦を決断します。
劇場地下から可燃性ガスを送り込み、水野の体内のガスと反応させて爆破する「酸化作戦」が進められる中、客席は警察の避難誘導によりもぬけの殻となります。しかし、藤千代は舞台を降りることを拒否し、水野だけが見守る無人の客席に向かって、静かに、そして美しく舞い続けます。
舞台が終わり、警察の企みに気づいた水野が舞台へ駆け寄ると、藤千代は彼を優しく抱きしめます。そして、袂からライターを取り出し、自らの手で火を灯すのです。閃光とともに大爆発を起こす劇場。炎に包まれながら崩壊していく舞台の上で、二人は灰燼に帰します。
このラストシーンが観客に与える衝撃は計り知れません。藤千代は水野の凶行に怯えていたのではなく、彼の狂気じみた献身のすべてを受け入れ、自らの誇りと命を賭して彼と「一蓮托生」になる道を選びました。恐怖映画として始まった物語が、壮絶な心中劇として幕を閉じるカタルシスこそ、本作が半世紀を超えて語り継がれる最大の理由です。