当時の掲示板やブログに残された参加者レポートを掘り起こすと、世間がイメージする「怒号飛び交う修羅場」とは大きく異なる、静かで奇妙なドラマが展開されていたことが分かります。
バスの車内では、行き先へ向かう途中に事務所スタッフから結婚に関する簡潔なアナウンスがありました。車内は一瞬静まり返ったものの、ファンたちは取り乱して暴れることもなく、互いに視線を交わしながら沈黙を守っていたと記録されています。
公園に到着し、七夕の笹に短冊を吊るすコーナーが設けられた際、参加者の感情は複雑に交錯しました。そこには、純粋な祝福の言葉だけでなく、やり場のない本音も記されていました。
「圭織、幸せになってね」
「元気な赤ちゃんを産んでください」
「今まで夢をありがとう」
ファンが残した手記には、「短冊に『おめでとう』と書くとき、手が震えて字が歪んだ」「誰一人としてスタッフに怒鳴り散らす者はいなかった。みんな現実を受け止めきれず、ただ菩薩のような笑顔を浮かべていた」という記述が見られます。
夕方に行われたミニライブおよび握手会において、飯田圭織本人がファンの前に登場し、涙ながらに結婚と妊娠を直接報告しました。その瞬間、会場のファンからは罵声ではなく、「圭織ー!」「おめでとう!」という温かいコールと割れんばかりの拍手が送られたのです。極限の状況に置かれたからこそ、ファンの中に「ここで暴れたら圭織を傷つける」「最後まで良質なヲタクとして彼女を見送ろう」という強烈な連帯感と自己規律が生まれた瞬間でした。