昏睡状態を脱した後に待っていたのは、想像を絶するリハビリの日々でした。一時は手足の麻痺や言語障害が懸念されるなか、若嶋津を精神的・肉体的に支え続けたのが、1985年の結婚以来寄り添い続けた妻・高田みづえです。
当時、トップ女性歌手として『硝子坂』や『そんなヒロシに騙されて』などのメガヒットを連発していた高田みづえは、人気絶頂の中で芸能界を電撃引退。角界に飛び込み、慣れない相撲部屋のおかみさんとして若い弟子たちの母代わりを務めあげてきました。事故当時も取り乱すことなく冷静に事態へ対処し、医師と綿密に連携を取りながら毎日の病室通いを続けました。
発声訓練では五十音を一文字ずつ発音することから始め、理学療法士とともに平行棒を使った歩行訓練に汗を流す夫の横で、彼女は決して弱音を吐かず励まし続けました。当時の手記や親しい関係者の述懐によると、「部屋の力士たちのためにも、親方が元気な姿で土俵へ戻る日を信じて疑わなかった」といいます。
さらに、長男で元俳優の勝信と、長女で女優・タレントとして活動するアイリも父の介護に全面協力。家族が一丸となって交代で病院を訪れ、筋肉の緊張をほぐすマッサージや会話のリハビリを根気強く支えました。この強固な家族愛こそが、医療関係者も驚くほどのスピード回復を後押しした決定的な要因でした。