手術が終了して病棟へ帰室した後も、麻酔の影響は数時間から数日間にわたって持続します。特に見落としてはならない3大術後観察項目を解説します。
ブロマージスコア(Bromage Score)による運動麻痺の評価
運動機能の回復状況は、客観的スケールであるブロマージスコアを用いて定量的に評価します。無理な早期離床による転倒事故を防ぐため、完全回復(スコア0)を確認することが原則です。
- Score 3(完全麻痺):足関節・膝関節ともに全く動かせない。
- Score 2(高度麻痺):足関節のみ動かせる(膝は曲げられない)。
- Score 1(中等度麻痺):膝関節を曲げることができる(下肢の挙上は不可)。
- Score 0(麻痺なし):下肢を完全に伸展位で持ち上げることができる(完全回復)。
腰椎麻酔後頭痛(PDPH)の予防と看護ケア
硬膜穿刺後頭痛(PDPH: Post Dural Puncture Headache)は、穿刺針によって硬膜・くも膜に生じた孔から脳脊髄液(CSF)が漏出し、頭蓋内圧が低下して痛覚感受組織が牽引されることで発症します。典型的な特徴は、「座位や立位で激化し、水平臥位(仰向け)になると劇的に軽快する拍動性頭痛」です。後頭部から頸部にかけての放散痛を伴うことも多くあります。
予防策としては、25G〜27Gの細径ペンシルポイント針(スプロッテ針やペンカン針)の使用が学会基準として定着しています。術後は十分な経口・点滴補液を行い、髄液産生を促します。発症した場合は無理な離床を避け、水平臥位での安静保持、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェン、カフェイン製剤の投与を行います。難治例では、麻酔科医による硬膜外自家血パッチ(EBP)の適応を検討します。
術後尿閉(POUR)に対する看護介入
腰椎麻酔では副交感神経(S2〜S4)が遮断されるため、排尿反射が消失し膀胱括約筋の協調不全が起こります。知覚が戻っても排尿機能の回復にはタイムラグがあるため、尿意を自覚できないまま尿閉(術後尿閉: POUR)に陥る危険があります。
帰室後は飲水量と初回排尿時間を管理し、術後6時間を経過しても自尿がない場合や下腹部膨満がある場合は、躊躇なく膀胱用超音波画像診断装置(膀胱エコー)を用いて残尿量を測定します。膀胱容量が400〜500mL以上蓄積している場合は、膀胱過伸展による筋原性障害を防ぐため、速やかに導尿を実施します。