ネット上では「警告灯がついても目盛りの一番下まで針が振り切れるまでは走れる」「完全に止まるまで使い切っても給油すれば元に戻る」といった無責任な情報が見受けられますが、これは車両工学の観点から極めて危険な誤解です。ガス欠寸前の状態で走り続ける行為は、車の心臓部に不可逆のダメージを与えます。
その最大の原因が燃料ポンプ(インタンク式フューエルポンプ)の故障です。現代の車は、燃料タンク内に浸されたポンプがガソリンをエンジンへ圧送しています。このポンプは、周囲のガソリンそのものを「冷却材」および「潤滑剤」として利用する設計になっています。燃料残量が極端に減ると、ポンプが空気を吸い込み始め、摩擦熱で高温となり焼き付きを起こします。燃料ポンプを全損交換する場合、工賃を含めて5万〜10万円以上の高額な修理費用が発生します。
また、完全にガス欠に至る前には明確な前兆症状が現れます。
- アクセルを踏んでも回転数が上がらず、息継ぎをするようなノッキング(ガクガクとした振動)が発生する
- 燃料パイプに空気が混入し、エンジンルームから「シュー」「カチカチ」といった異音や吸気異常音が出る
- 排気ガスから未燃焼ガスの異臭が漂い、メーターパネルのエンジン警告灯(チェックランプ)が点滅する
エンジンが完全停止すると、油圧パワーステアリングや倍力装置付きフットブレーキのアシストが瞬時に失われ、「ハンドルが岩のように重くなり、ブレーキペダルが奥まで踏み込めなくなる」という極めて危険な制御不能状態に陥ります。ランプ点灯後の限界走行は、単なる燃料代の節約どころか、命と愛車を危険に晒すハイリスクな行為です。