会津さざえ堂の正式名称は「円通三匝堂(えんつうさんそうどう)」と呼びます。「匝(そう)」には巡るという意味があり、建物を3回回りながら上り、3回回りながら下りてくる構造に由来しています。堂頭に入ると左回りにスロープを上り始め、最上部の太鼓橋(跨道橋)を渡ると、今度は右回りの下りスロープへと自然に切り替わります。
この動線の最大の特徴は、「上り専用の通路」と「下り専用の通路」が建物の中心軸を挟んで背中合わせに配置されている点にあります。DNAの二重螺旋モデルやねじれたリボンを思い浮かべると分かりやすいでしょう。参拝者は建物の外周に沿って傾斜した床を進むため、対向者と視線が交差することすらありません。出口は建物の裏手へ抜ける一方通行となっており、混雑時でも人の流れが一切滞留しない完璧な動線設計がなされています。
当時の建築図面や立体構造を分析した専門家は、「現代の都市計画や大型商業施設の避難動線、バリアフリー動線の思想を200年以上前に木造建築だけで完成させていた驚異の事例」と評価しています。