逃走劇がこれほど長期化した最大の要因は、樋田が取った「日本一周サイクリストへのなりすまし」という大胆な偽装でした。
荷台に大量の荷物を積み、「日本一周中」の手書きプレートを掲げた自転車に乗ることで、道行く人々から「挑戦する若者」として好意的に受け止められました。道の駅で休憩する観光客や地元住民から飲食物の差し入れを受け、時には笑顔で記念撮影に応じるなど、逃亡犯の心理とはかけ離れた振る舞いを見せていたことが報じられています。
さらに逃走中に出会った同行者の男性(当時44歳)の存在も、捜査の目をくらませる結果となりました。男性は単独で野宿旅をしていた人物で、樋田の素性を知らぬまま約3週間にわたり行動を共にしました。警察による事情聴取の結果、男性に犯人隠避の意図はなく、純粋な旅仲間と誤認していたことが判明し、立件は見送られています。