サンスクリット語で「死骸」を意味する「シャヴァ(Śava)」に由来するシャバーサナ(屍のポーズ)。ヨガインストラクターが口を揃えて「最も難しい」と語る最大の理由は、「肉体と精神の完全な静止」を自らの意思でコントロールしなければならない点にあります。
激しく体を動かすアーサナは、筋肉の使い方やバランスに集中しやすいため、雑念を払うのが比較的容易です。しかし、動きを止めて仰向けになった瞬間、人の脳内には過去の後悔や明日の予定といった思考のノイズ(マインドワンダリング)が次々と浮かんできます。あるいは、思考を手放そうとするとそのまま本能的に深い眠りへと落ちてしまいます。
屍のポーズの真髄は、「眠りと覚醒の境界線」に留まり続けることです。意識をクリアに保ちながら、全身の筋肉、内臓、そして思考の活動を完全にオフにする静寂の境地こそが、ヨガ修行者が生涯をかけて探求する難しさの根源となっています。