下剋上の狼煙を上げた長州と、受けて立つ藤波による一騎打ちは、ファンの間でいつしか「名勝負数え唄」と称されるようになりました。1982年秋から1985年にかけて繰り広げられたシングルマッチの数々は、従来のヘビー級プロレスの常識を覆すハイスピードかつスリリングな攻防の連続でした。
特にファンを震撼させたのが、1983年4月3日の蔵前国技館で行われたWWFインターナショナル・ヘビー級選手権です。藤波の必殺技であったサソリ固めを、長州が掟を破って藤波本人に仕掛けた「掟破りの逆サソリ」は、心理戦としても観客に強烈な衝撃を与えました。これに対抗し、藤波も長州の必殺技であるリキラリアットを繰り出すなど、技の意趣返し合戦はリング上の緊張感を極限まで高めました。
ドラゴン・藤波辰爾の華麗な空中殺法とドラゴンスクリュー、革命戦士・長州力の怒涛のストンピングとハイスパート・レスリング。相反するスタイルが完璧に噛み合った攻防は、単なる勝敗を超え、観客の感情を限界まで揺さぶる芸術的な熱狂空間を創出しました。