妊娠糖尿病とは、「妊娠中にはじめて発見または発症した、糖尿病には至っていない糖代謝異常」と定義されています。もともと糖尿病と診断されていた女性の「糖尿病合併妊娠」とは明確に区別されます。
妊娠中期以降、胎盤から分泌されるヒト胎盤性ラクトゲン(hPL)やプロゲステロン、コルチゾールなどのホルモンは、母体のインスリンの働きを阻害(インスリン抵抗性を亢進)させます。これは、母体内のブドウ糖を胎児へ優先的に届けるための自然な生理現象です。しかし、母体の膵臓がインスリン分泌を十分に増やせない場合、血糖値が異常に跳ね上がってしまいます。つまり、病因の主軸は「胎盤ホルモンの作用と母体の遺伝的インスリン分泌能のミスマッチ」にあります。
診断は、妊娠初期の随時血糖検査や、中期(妊娠24〜28週頃)に行われる「75g経口ブドウ糖負荷検査(75gOGTT)」によって確定します。甘いサイダーのような検査液を飲み、一定時間ごとに採血を行いますが、その基準値は極めてシビアに設定されています。
日本糖尿病・妊娠学会の基準では、上記の3つの数値のうち「たった1つでも満たせば妊娠糖尿病」と確定診断されます。通常の健康診断であれば「全く問題ない健康体」と診断される数値であっても、胎児への影響を考慮して極限まで閾値が下げられているのです。