フリマアプリやネット上の都市伝説において、頻繁に初心者が惑わされる2大トラップが「昭和64年銘」と「記念硬貨全般」の価値判定です。ここには市場構造を無視した誇張や先入観が根強く残っています。
まず代表的な俗説が「昭和64年の500円玉は製造期間が7日間しかなかったため、数十万円の価値がある」という言説です。しかし、財務省および造幣局の記録を確認すると、昭和64年銘の500円硬貨は1,604万2,000枚製造されています。昭和62年の約277万枚と比較しても6倍近く存在し、昭和天皇崩御の直後に多くの国民が「記念になる」とタンス貯金に回したため、現存する残存数が極めて多いのが実態です。傷だらけの流通品であれば古銭商での査定は等価(500円)にとどまり、未開封のパックや貨幣セットでなければ実質的なプレミアは発生しません。
同様の誤解は「記念硬貨500円」にも当てはまります。1985年のつくば万博記念、1998年の長野五輪、2002年の日韓ワールドカップ、そして東京2020オリンピック・パラリンピックなど、過去に多数の500円記念硬貨が発行されました。しかし、これらは1回あたり1,000万枚〜数千万枚規模で大量発行されており、貴金属(金や銀)を含まない銅やニッケルの合金硬貨であるため、古銭市場での買取価格は「額面通り(500円)」または手数料を差し引くと額面割れになるケースすら珍しくありません。
令和3年(2021年)末から導入されたバイカラー・クラッド仕様の「新500円玉」についても同様です。二色構造や異形斜めギザなど最先端の偽造防止技術が詰まっていますが、現行の流通貨幣として日々大量に供給されているため、通常流通品にプレミアム価格が上乗せされることはありません。