二階堂ふみが本格的に女優活動をスタートさせた2010年前後、インターネット掲示板やメディアを席巻したのが「宮﨑あおいと激似である」という比較論争でした。
当時、国民的女優として映画界の頂点に君臨していた宮﨑あおいと、黒目がちな大きな瞳、スッと通った鼻筋、アンニュイな透明感、さらには小柄でナチュラルな輪郭に至るまで共通点が極めて多く、「姉妹ではないか」「ドッペルゲンガーレベルで似ている」と大騒動になりました。2010年放送のドラマ『熱海の捜査官』で怪しげな美少女・甘利レミ役を演じた際も、ミステリアスな空気感と相まって「ネクスト宮﨑あおい」の呼び声が一気に高まりました。
しかし、表現者としての本質において、二人は最初から全く異なるベクトルを持っていました。映画関係者の証言によると、当時の二階堂ふみは偉大な先輩と比較されることに対し、光栄に思いつつも「自分自身の足で立ち、自分だけの芝居を刻み込みたい」という強烈なプロ意識を滾らせていたといいます。
後年のインタビューでも語られた通り、彼女は「誰かの影」に甘んじることなく、むしろ人間の泥臭さやエゴイズム、狂気を剥き出しにする先鋭的なインディペンデント映画へと果敢に飛び込んでいきました。この強い意志こそが、単なる「そっくりな美少女」から「唯一無二の怪演派女優」へと脱皮する決定打となったのです。