飼い主が最も頭を抱えるのが、「今すぐ起こして病院へ走るべきか、それとも朝まで様子を見てよいのか」という初動の判断です。睡眠中の呼吸の乱れには、生理的な正常反応と、生命の危機を知らせる病的な異常反応の双方が存在します。
生理的な現象の代表格が、浅い眠りの状態であるレム睡眠です。犬も人間と同様に睡眠サイクルを持っており、身体の筋肉は弛緩しているものの脳が活発に活動しているレム睡眠中には、日常の記憶を整理したり夢を見たりしています。このとき、犬レム睡眠ピクピク呼吸と呼ばれる現象が発生します。手足が小さく痙攣するようにピクピクと動き、口元をもぐもぐさせたり、小さな寝言のような声を漏らしながら呼吸が一時的に速くなるのが特徴です。この状態は通常、数分から長くても15分程度で自然と深い眠り(ノンレム睡眠)へと移行し、穏やかな深い呼吸へと戻っていきます。
一方で、警戒しなければならないのが病的な頻呼吸です。夢を見ているわけでもなく、身体のピクつきもないまま、胸郭とお腹が激しく連動して浅い息を絶え間なく繰り返すケースです。獣医学の臨床データにおいても、犬が寝てる時に呼吸が早い原因として最も警戒すべきは、循環器系や呼吸器系の機能破綻と指摘されています。リラックスして副交感神経が優位になるはずの睡眠時に、呼吸筋を総動員しなければ酸素を取り込めない状態に陥っているとすれば、それは生体が発している切実なSOSに他なりません。