現在のストイックな姿を理解する上で欠かせないのが、三上博史の若い頃に刻まれた圧倒的なキャリアの軌跡です。1962年7月23日、東京都に生まれた三上博史の原点は、劇作家・映画監督である寺山修司との宿命的な出会いにありました。
高校時代、友人のオーディションに付き添いで訪れた際、寺山修司の鋭い審美眼に留まった三上は、泉鏡花原作の仏日合作映画『草迷宮』(フランス公開1979年、日本公開1983年、ピエール・ブロンベルジェ製作)の主演に抜擢され、鮮烈な銀幕デビューを飾ります。同1983年には大島渚監督の世界的名作『戦場のメリークリスマス』にも出演。アングラ演劇と前衛映画の最前線で浴びた強烈な洗礼が、彼の表現者としてのDNAを決定づけました。
しかし、1984年の『無邪気な関係』でテレビドラマ初出演を果たしたのち、彼を待っていたのは全く異なるメインストリームの熱狂でした。1980年代後半のフジテレビを皮切りに巻き起こったトレンディドラマの波に乗り、三上博史のドラマ代表作が次々と世に放たれます。
1988年の『君の瞳をタイホする!』で一躍トップスターへ躍り出ると、『君が嘘をついた』(1988年)、『愛しあってるかい!』(1989年)、『世界で一番君が好き!』(1990年)と立て続けにヒットを記録。洗練された都会的な青年像を演じ、社会現象を巻き起こしました。
特筆すべきは、彼が単なる甘い二枚目にとどまらなかった点です。1992年の『あなただけ見えない』では多重人格者を怪演し、1994年の『この世の果て』では孤独と絶望に苦しむピアニストを狂気的に演じ切るなど、人間の暗部を抉り出す役柄で評価を不動のものにしました。さらに1996年には岩井俊二監督の映画『スワロウテイル』で主人公のフェイホン役を熱演。無国籍で生命力あふれる演技は映画史に残る名演として今なお語り継がれています。
音楽面でもオリジナルアルバムを5枚リリースし、全国ツアーを敢行するなど、既成の俳優枠に収まらない多面的な表現活動を若い頃から一貫して展開していました。