「トレンチコートのベルトの結び方、いつも適当になっていませんか?ほどけやすい・野暮ったく見える意外な原因とは何か」。大手アパレルブランドのチーフパタンナーや百貨店売り場のスタイリスト取材を進めると、多くのユーザーが無意識に陥っている共通のミスが明らかになりました。原因は結ぶ技術そのものよりも、「生地の滑り特性」と「重心位置の歪み」を考慮していない点にあります。
高密度ギャバジンやポリエステル混紡の上質なトレンチ生地は、撥水性と上品な艶を持つ反面、表面の摩擦係数が極めて低く作られています。そのため、スニーカーの靴紐と同じ感覚で平結びや簡易的な蝶結びを施しても、歩行時の骨盤の揺れとコートの揺らぎによってわずか数分でノット(結び目)が緩んでしまいます。また、重みのある金属やレザー巻きバックルが結び目の片側にぶら下がることで、片側だけに下向きの引力がかかり、歩くたびにベルト全体が回って背中側にズレてしまう現象が起きます。
見た目の野暮ったさに関しては、結び目の位置が中心(おへその真上)に鎮座していることが大きな要因です。正中線上に大きな結び目を作ると視覚的な分断が起き、胴回りが太く見えがちです。プロのスタイリングでは、結び目を左右どちらかのアタリに約5〜8cmオフセット(ずらす)させ、縦方向のドレープを意図的に作ることで、視線を上下に誘導して驚くほどのスタイルアップを実現しています。