嫌儲板が現在の規模に至る発火点となったのは、2011年末から2012年1月にかけてネット空間を揺るがした「ステマ騒動」とアフィブログ対立の歴史です。もともと「ニュース速報(嫌儲)板」自体は2007年、当時の「ニュース速報板(ニュー速)」の荒廃や商業化を嫌った一部ユーザーのために隔離板として新設されたものでした。しかし、初期の数年間は住民もまばらで、「人が寄り付かない限界集落」のような状態が続いていたのが当時の偽らざる現場の姿です。
潮目が完全に変わったのは2012年1月のことでした。大手飲食店レビューサイトでのやらせ投稿疑惑や、ペニーオークション詐欺事件を契機に、ネット上における「ステルスマーケティング(ステマ)」の存在が白日の下に晒されます。時を同じくして、旧ニュー速では「特定の企業や商品を称賛する作為的なスレッド」が乱立し、そのレスを特定のまとめサイト(アフィリエイトブログ)が無断で抽出し、扇情的な見出しをつけて広告収入を稼ぐ構造が常態化していました。
「自分たちの書き込みが、見知らぬブログ管理者の私腹を肥やす無料のコンテンツにされている」――この強烈な搾取感と怒りが臨界点に達した住民たちは、一斉にニュー速を脱出。新天地として選ばれたのが、転載を固く禁じる規約を掲げていた嫌儲板でした。この「ステマ移民」と呼ばれる大移動によって、数万規模のアクティブユーザーが一夜にして流入し、掲示板の勢力図は一変しました。
移住を果たした住民たちは、大手まとめブログ(「はちま起稿」「オレ的ゲーム速報@刃」「やらおん!」など)に対する「転載禁止」の姿勢を徹底。運営側に対しても働きかけを続け、2014年には2ちゃんねる公式による「転載禁止」ルールの明文化を勝ち取ることになります。情報共有というネットの公の場が、企業の宣伝や個人の小遣い稼ぎに侵食されることへの強い拒絶反応こそが、嫌儲板を巨大化させた原動力でした。