性格診断としての右脳派・左脳派が誤りであるからといって、左右の大脳半球に機能的な違いが全くないわけではありません。神経解剖学において、特定の認知機能が左右どちらかの大脳半球に偏って処理される現象は機能の側性化(大脳半球優位性)と呼ばれ、確固たる医学的事実として確立されています。
左脳の最も代表的な機能は、統語処理と文法を司る言語処理です。大半の右利きの人(約95%以上)および左利きの人(約70%)において、言語中枢(ブローカ野およびウェルニッケ野)は左半球に位置しています。左脳は言葉の文法構造を解読し、記号を順序立てて論理的に並べ替える「直列・線形的な情報処理」を得意としています。
対する右脳は、視覚・空間認識能力や文脈の把握において主導的な役割を果たします。物体の立体的な配置や幾何学模様の識別、他者の表情から感情を読み取る非言語的コミュニケーション、さらには言葉の「ニュアンス」や皮肉、メタファーを理解する機能は右半球の働きに大きく依存しています。全体像を一瞬で俯瞰し、パターンとして認識する「並列的な情報処理」が右脳の真骨頂です。
ただし、ここで決定的に見落としてはならない要素が脳梁の働きです。健康な人間の脳内では、約2億〜2億5,000万本もの神経線維が左右の半球を縦横無尽に結んでおり、1秒間に数千回もの電気信号を行き交わせています。私たちが小説を読むとき、左脳で文字と文法を解析しながら、同時に右脳で情景や登場人物の感情をイメージ化しています。直感力と論理的思考は対立する二者択一ではなく、脳梁を介した両半球の瞬時の対話によって初めて成立しているのです。