かつての日本社会において、家族の基本は戦前の民法が定めた「家制度」に基づく拡大家族でした。家督を継ぐ長男が親と同居し、先祖代々の家業や土地を守る生活様式が全国津々浦々に根付いていたのです。しかし、この強固な枠組みは昭和の激動期に激変を遂げました。
核家族化の理由を紐解く最大の契機となったのが、1960年代の高度経済成長期の家族形態への再編です。地方の農村部から大都市圏の重化学工業地帯やサービス産業へ向けて、「金の卵」と呼ばれた若者たちが集団就職で大量に移住しました。次男や三男のみならず長男までもが地方を離れ、大都市でサラリーマンとして生計を立てるようになったのです。
公団住宅(団地)の建設ラッシュや電気洗濯機・冷蔵庫・テレビなどの「三種の神器」の普及も、親世代の手を借りずに独立した生活を営む後押しをしました。厚生労働省の「国民生活基礎調査」などの公的データによると、核家族の割合推移は1960年代を通じて右肩上がりに急上昇し、1975年には全世帯の約65%に達してピークを記録。「核家族」という言葉自体が当時の大衆文化における最大の流行語となりました。
企業戦士として長時間労働をこなす夫と、家庭を守り育児を専業で担う妻という「昭和モデル」は、まさに高度経済成長の経済的要求と都市化の波が生み出した産物だったと言えます。