フランク・ロイド・ライトの愛弟子として来日し、日本の近代建築史に巨大な足跡を刻んだアントニン・レーモンド。彼が率いる株式会社レーモンド設計事務所が手掛けた数多くのマスターピースの中でも、名古屋に遺されたこの建築は特別な輝きを放っている。
特筆すべきは、インテリアデザイナーであった妻ノエミ・レーモンドとの見事な協業だ。コンクリートや鉄、ガラスといった工業的素材を大胆に扱いながら、内部空間にはどこか温もりが漂う。ノエミの手がけた繊細な色彩感覚や家具デザインが、夫アントニンの力強い構造体にしなやかに寄り添う。夫妻の情熱と感性が呼応し合って生まれた調和は、見る者の心を掴んで離さない。