SNSやネット上のコミュニティ(Xや知恵袋など)を観察すると、「12月になると街中で同じ洋楽ばかり流れて食傷気味になるはずなのに、いざ聴かないと物足りない」「マライアのイントロが鳴るだけで条件反射的にテンションが上がる」といった声が毎年数多く投稿されています。なぜ人間は、すでに何百回と聴き古したはずの同一の楽曲群に対して、毎年新鮮な愛着を抱くのでしょうか。
音楽心理学および神経科学の研究によると、これには「認知的ノスタルジア(懐古感情)」と「季節的プライミング効果」が深く関わっています。
クリスマスソングは、幼少期の記憶、家族団らんの温もり、過去の恋愛、あるいは街のイルミネーションの煌めきといった、リスナー自身の「ポジティブな情動記憶」と強固に結びついています。特定のコード進行(前述のサブドミナント・マイナーやメジャーセブンスコード)とスレイベルの音色を聴くことで、脳内ではドーパミンが分泌され、過去の幸せな感情が瞬時に追体験される仕組みになっているのです。
さらに、現代の日本社会における「季節行事の記号化」も大きな要因です。多忙を極める現代人にとって、耳から入るお馴染みの洋楽ナンバーは、「非日常のホリデー期間に入った」という心理的スイッチを切り替えるための最も手軽で安全な装置として機能しています。