日本のグラブ文化における「こだわり」の原点を語るうえで、株式会社久保田運動具店の存在を外すことはできない。かつて同社が提唱した「湯もみ型付け」は、新品の硬いグラブをお湯につけて柔らかくし、即座に実戦投入可能な状態へ仕上げるという画期的な技法であった。この革新的なアプローチを確立したのが、伝説の職人として知られる江頭重利氏である。
江頭氏の仕事は、単に革を柔らかくすることにとどまらない。打球の回転や選手の守備スタイルに合わせてポケットを形成し、素手感覚でボールを扱える唯一無二のグラブを生み出した。久保田スラッガーが示したこの開拓精神は、後に続く数多くの独立工房や職人たちに大きな影響を与え、珍しい独自製法を誇るメーカーが生まれる土壌を形成したと言えるだろう。