なぜ教科書は「本当のこと」を書かないのか。著者の井沢元彦氏が一貫して追及するのは、日本人が歴史的敗因や都合の悪い事件を「穢れ」として隠蔽しようとする心理的メカニズムだ。聖徳太子の実在論争から明治維新の陰の主役まで、通説の裏に潜む暗部に切り込む手腕は極めて鮮やかである。
学校の授業で教わる日本史は、どうしても政治的妥協や事件の「表面的な結果」ばかりをなぞりがちになる。しかし、本作が提示する独自検証は違う。合理的な因果関係だけでは説明がつかない歴史の断層に、日本人特有の「怨霊封じ」の呪術的思考が介在していたことを浮き彫りにする。教科書を鵜呑みにしてきた読者ほど、この真実に直面したときのショックは大きいはずだ。