多摩丘陵の尾根筋に囲まれた町田市上小山田町の湧水群は、古くから農業用水や生活を潤す源として大切にされてきました。しかし、最初から現在のような整備された親水空間が存在していたわけではありません。
かつてこの一帯は山裾の湿地帯(谷頭=やとがしら)であり、明確な「ここが源流」という単一のモニュメントはありませんでした。転機が訪れたのは1990年代後半です。鶴見川流域の水環境保全や地域住民の環境意識醸成を目的に、町田市や市民団体、河川管理者による整備計画が本格始動しました。そうした鶴見川源流の泉の歴史と経緯を経て、1999年(平成11年)に現在のシンボル空間が完成したのです。
現場の岩肌から絶え間なく湧き出す水は、丘陵に降った雨が長い年月をかけて地層を通り抜け、地表へと顔を出した清澄な地下水です。川の最上流部として位置づけられたこの空間は、ただの観光地ではなく、都市河川と自然が共生するシンボルとしての深い意味を持っています。