なぜ猫は特定の場所を撫でられると、目を細めて気持ちよさそうにするのだろうか。鍵を握るのは「猫の臭腺」の分布だ。動物行動学のスペシャリストであるジョン・ブラッドショー博士らの研究によれば、猫の顔まわりや頭部には独自の匂いを分泌する分泌腺が集中している。特に顎の下、頬、耳の付け根、そして尾の生え際にあたる尾根部は、猫にとって自分自身のフェロモンを擦り付けたい特別なエリアなのだ。
飼い主がこれらの部位をやさしく撫でる行為は、猫にとって自分の匂いを共有するフェロモンコミュニケーションそのもの。つまり、お互いの信頼関係を再確認する儀式として機能している。なかでも耳の付け根や顎の下は、猫が自分では直接舐めてグルーミングできない「かゆい所に手が届く」神部位。ここを指の腹でゆっくりとなぞるだけで、猫は深いリラックス状態へと引き込まれていく。