カレーをめぐるインターネット上の議論には、いくつかの根強い誤解や盲点が存在します。
第一の誤解は、「スパイスが強く辛口であるほど本格的で優れている」という偏見です。南インドやスリランカの現地料理において、スパイスは単なる刺激物ではなく、消化を助け素材の風味を引き立てる「薬膳」として機能しています。現に、横浜の百名店に名を連ねる名店でも、ベースとなるラッサムやサンバルは酸味と出汁のバランスが重視されており、いたずらに辛さを強調していません。激辛を期待して訪れると、素材本来の滋味深さを見落とす結果になりかねません。
第二の盲点は、「バーグの生玉子と焼き玉子の選択による味覚構造の劇的な変化」です。ネット上では「生玉子派が多数派」とされがちですが、実際には熱々の豚バラ肉に玉子の白身が絡んでまろやかになる生玉子に対し、焼き玉子は香ばしいフライの風味が加わり、濃厚なルーを一層力強く受け止めます。これは優劣ではなく、塩分濃度を中和したいのか、最後までパンチを効かせたいのかという構造的な選択肢です。
第三に、スープカレーとライスの関係性です。アルペンジローなどのシャバシャバとしたスープ状カレーにおいて、ご飯をスープに全投入してしまう食べ方は推奨されません。スプーンでライスをすくい、スープに浸しながら口へ運ぶことで、固めに炊き上げられた白米の甘みとスパイスの輪郭が口の中で初めて完成するように計算されています。