日本の古流剣術や武道論において、「初段の型(一本目)」にはその流派が持つ最も重要な身体操作と戦術理念が集約されています。『鬼滅の刃』における呼吸法もまさにこの構造を踏襲しています。
劇中で桑島慈悟郎(元鳴柱)が善逸に授けた「一つのことしかできないなら、それを極め抜け。泣いてもいい、逃げてもいい、ただ諦めるな。極限まで叩き上げて、誰よりも強靭な刃になれ」という言葉は、本作の武術的・心理的テーマを象徴しています。
心理学における「選択と集中」および運動学習理論の観点からも、複数の技を中途半端に使い分けるより、極限まで単一動作を自動化(無意識化)した方が、極限の危機状況において迷いなく最速の反射行動を取ることができます。善逸が壱の型「霹靂一閃」しか使えないコンプレックスを抱えながらも、上弦の鬼を倒し得たのは、壱の型という基礎動作を何万回、何十万回と反復し、「基礎を究極の奥義へ昇華させた」からに他なりません。