敷地内には、日本の近代・現代建築史にその名を刻む巨匠たちの傑作が点在しています。それぞれの見どころを深掘りしていきましょう。
人工照明が一切存在しない奇跡の空間|安藤忠雄「光の美術館」
2011年に開館した「光の美術館(CLAP)」は、建築家・安藤忠雄氏が手掛けた極めてストイックな建築です。館内に入って驚かされるのは、室内照明器具がひとつも設置されていないという事実です。スリット状の開口部や天窓から差し込む太陽光だけを頼りに、展示されたアントニ・タピエスらの絵画と向き合う設計になっています。朝の清冽な光、正午の強い陰影、夕暮れの茜色へと刻一刻と表情を変える展示室そのものが、時間と光の移ろいを体感する巨大なインスタレーションといえます。
地上4メートルに浮かぶ一本足の茶室|藤森照信「茶室 徹」
桜の木立の合間から突如として姿を現すのが、建築史家・建築家の藤森照信氏が手掛けた「茶室 徹(てつ)」です。樹齢約80年のヒノキの一本足で支えられたその佇まいは、まるでジブリの世界から飛び出してきたかのような有機的な温もりを漂わせています。作家・司馬遼太郎氏の愛称「徹」にちなんで命名されたこの茶室は、春には満開の桜の雲の上に浮かんでいるかのような幻想的な光景を生み出し、国内外の写真家たちを魅了し続けています。
洗練の極致を見せる原点|谷口吉生「清春白樺美術館」とルオー礼拝堂
ニューヨーク近代美術館(MoMA)や豊田市美術館で世界的に知られる谷口吉生氏にとって、清春白樺美術館はキャリア最初期の記念碑的な美術館建築です。武者小路実篤や志賀直哉をはじめとする「白樺派」の精神を顕彰するために建てられた館内には、ロダンやブールデルの彫刻、セザンヌや梅原龍三郎らの絵画が静かに息づいています。また、同氏が設計した隣接する「ルオー礼拝堂」では、ジョルジュ・ルオー制作の荘厳なステンドグラスが外光を受けて輝き、静謐な祈りの空気が満ちています。