ネット上の口コミやSNSで時折見受けられる「黒っぽいわらび餅が出てきて驚いた」「想像していた弾力と違ってドロドロしていた」という声は、本わらび粉の物理的特性を知らないことから生じる典型的な誤解です。
スーパーなどで100円前後で販売されている透明でプルプルとしたわらび餅の主原料は、サツマイモから抽出した「甘藷デンプン」や「タピオカデンプン」です。これらは白く透明に固まる性質があり、冷やしても固くなりにくいため大量生産に適しています。
対して、純粋な本わらび粉 100%で練り上げたものは、空気に触れて熱が加わることで酸化し、深みのある濃い茶色や漆黒へと変化します。また、デンプンの「糊化(アルファ化)」と「老化(ベータ化)」のスピードが極めて速いため、練り上げた瞬間から時間経過とともに急激に弾力が失われ、水分が分離する「離水現象」が始まります。
茶寮宝泉をはじめとする名店が「持ち帰り不可」「席に届いたらすぐにお召し上がりください」と強くアナウンスするのは、職人が鍋の前で極限まで引き出した糊化のピーク状態(至高の口溶け)が、室温下ではわずか10分〜15分程度しか持続しないためです。