富士山を取り巻く観光シーンは、ここ数年で劇的な変貌を遂げた。通行料の改定や夜間登山の制限といった制度が完全に定着した2026年現在、山頂を目指す弾丸登山者の波は落ち着きを見せている。代わりに台頭してきたのが、麓の歴史的遺産をじっくりと時間をかけて巡る「滞在型・文化探訪」の旅スタイル路線の確立だ。
かつては登山シーズン中の通過点に過ぎなかった富士吉田市街や神社周辺のエリアだが、今は違う。旅人たちは急ぐ手を止め、足元に広がる苔の緑や、歴史を物語る石灯籠の刻印に目を留めるようになった。山そのものへ挑むスリル以上に、山を敬い、拝んできた人々の精神構造を理解したいという欲求が勝っているのだ。