もし医師の診断や処方管理を受けずに、市販のロキソニンを自己判断で毎日飲み続けた場合、体内ではどのような異変が進行するのでしょうか。最も警戒すべきは、消化器系と泌尿器系に対する静かなる破壊です。
第1のリスクは、胃痛から胃潰瘍・十二指腸潰瘍への悪化です。プロスタグランジンは痛みのもとであると同時に、胃の粘膜を守る粘液の分泌を促し、胃壁を胃酸から保護する不可欠な役割を果たしています。ロキソニンの連用によってプロスタグランジンの合成が長期にわたり遮断されると、胃粘膜のバリア機能が著しく低下します。その結果、胃酸が自身の胃壁を溶かし始め、胃痛、胸やけ、さらには胃潰瘍や消化管出血を引き起こします。医療現場で「痛み止めと胃薬を一緒に飲む理由」はまさにここにあり、プロスタグランジン減少による胃粘膜障害を補うためにプロトンポンプ阻害薬(PPI)や防御因子増強薬が併用されるのです。
第2のリスクは、腎機能障害の誘発と悪化です。プロスタグランジンは腎臓の血管を拡張させ、十分な血流量を維持する働きも担っています。ロキソニンを常用すると腎血管が収縮し、腎臓への血流が急激に低下します。これにより老廃物を濾過する機能が落ち、体内に水分や塩分が蓄積して「むくみ(浮腫)」や血圧上昇が生じます。感染症医で神戸大学教授の岩田健太郎氏が著書等で警鐘を鳴らしているように、特に脱水状態のときや高齢者が鎮痛剤を無秩序に乱用すると、自覚症状がないまま急性腎障害(AKI)や慢性腎臓病へと進行するケースが後を絶ちません。