本件を深く読み解く上で避けて通れないのが、日本社会に根深く染み付いている「母親神話」と親権をめぐるバイアスです。
多くの人は「父親が親権を取った=母親側に致命的な瑕疵(不倫、育児放棄、精神疾患など)があった」と短絡的に結びつけがちです。しかし、近年の家事調停の実情に詳しい家事法専門家は、次のように構造的な問題を指摘します。
「日本の民法における単独親権制度下では、離婚時にどちらか一方を選ばざるを得ません。その際、家庭裁判所が最重要視するのは『現状維持の原則(子の監護の継続性)』です。父親側が実家の支援を受けられる、あるいは父親の自宅に子どもが残り通学環境を変えないことが子どもの精神的負担を減らすと判断されれば、合意の上で父親が親権者となるケースは極めて合理的です」
小日向と田中のケースもまさにこれに該当します。多忙を極める田中直樹もまた、仕事をセーブしつつ早朝の弁当作りを自らこなすなど、父親として全力で育児に関わってきました。母親である小日向しえを悪者に仕立て上げることでしか納得できなかった世間の偏見こそが、無根拠なバッシングを生み出した元凶だったと言えます。