超小型犬として作出された背景から、骨格系および内臓機能に遺伝的脆弱性を抱えやすい側面があります。ヨークシャーテリアがかかりやすい病気を正しく把握し、初期症状を見逃さないことが長寿化への直結ルートです。
臨床現場で最も遭遇頻度が高いのが、膝蓋骨脱臼(パテラ)です。後ろ足の膝の皿が正常な位置から内外へ外れてしまう疾患で、グレード1から4まで分類されます。「散歩中に時々後ろ足をピョコッと浮かせる」「階段の昇降を嫌がるようになった」といったサインは脱臼の兆候です。フローリングに滑り止めのカーペットを敷き詰める、爪や足裏の飾り毛をこまめにカットしてグリップ力を確保する環境整備が絶対条件となります。
呼吸器系では、気管虚脱に細心の注意を払わなければなりません。空気の通り道である気管が押し潰されたように扁平化し、興奮時や高温多湿時に「ガーガー」というアヒルの鳴き声のような特徴的な咳を発症します。首輪での散歩は気管に直接圧迫を加えるため絶対に避け、体幹全体を支える気管に優しい形状のハーネス(胴輪)を選択することが獣医学的に強く推奨されます。
さらに若齢期(生後数ヶ月〜1歳未満)に見られる門脈体循環シャントや、シニア期に急増する僧帽弁閉鎖不全症(心臓病)、白内障も好発疾患です。これらを早期発見するためには、1歳を過ぎたら年1回、7歳を超えたシニア期以降は年2回の定期健康診断(血液検査・レントゲン・超音波検査)を習慣化することが不可欠です。