映画すみっコぐらしを観た大人が涙を流す最大の理由は、登場するキャラクター全員が「何かしらのコンプレックスや生きづらさ」を抱えている点にあります。自分が何者かわからない「ぺんぎん?」、体型を気にして痩せたい「ねこ」、本当は恐竜なのに捕まるのを恐れてトカゲのふりをしている「とかげ」など、完璧な存在はひとりもいません。
日々社会で役割を演じ、弱音を吐けずに生きている大人ほど、彼らが互いの不完全さを受け入れ、無理に変えようとせずそっと寄り添い合う姿に強烈なカタルシスを覚えます。頑張ることを強要するのではなく、「隅っこにいてもいいんだよ」と存在そのものを肯定してくれる優しさが、疲れた大人の心に深く染み渡るのです。
さらに、ナレーション(井ノ原快彦・本上まなみ)がキャラクターの気持ちを代弁する絵本のような語り口が、観客の感情移入を絶妙に促します。セリフを直接語らないからこそ、観客自身がキャラクターの心情を想像し、自分の人生経験や孤独感と重ね合わせてしまう構造が見事に機能しています。