ムタを語る上で欠かせないのが、1995年公開のジブリ映画『耳をすませば』との深い関連性です。『耳をすませば』では、主人公の月島雫が電車の中で見かけた太った野良猫を追いかけ、アンティークショップ「地球屋」へと辿り着きます。あの時、電車に揺られていたふてぶてしい猫こそが、ムタその人(猫)です。
作中では近所の子どもから「ムーン」、別の家では「お玉」など様々な名前で呼ばれていましたが、「ムーン」と「ムタ」は公式に同一人物として設定されています。柊あおい氏の原作コミックおよびスタジオジブリの設定において、『猫の恩返し』は「高校生になった月島雫が書き上げたスピンオフ小説」という位置づけになっているためです。
雫の空想世界の中で、日常で見かけるマイペースな野良猫「ムーン」は、頼もしくも型破りな「ルナルド・ムーン(ムタ)」へと昇華され、男爵人形だったバロンとともに冒険を繰り広げることになりました。現実と創作が交差するこの構造を知ると、両作品の鑑賞体験が一段と深まります。