なぜ彼女たちは、これほどまでに港区という場所に固執したのか。背景にはメディアが作り上げた都市伝説的なライフスタイル像がある。かつて月刊誌『東京カレンダー』が洗練された大人の恋愛と美食の舞台としてこの街を描き、水川あさみ主演で話題を呼んだドラマ『東京女子図鑑』は、地方出身の女性が上京し、上層の暮らしを追い求める姿をリアルに提示した。
これらの作品は現在もNetflixやAmazon Prime Videoなどの動画配信サービスで視聴され続け、若い世代の憧れを刺激し続けている。しかし、フィクションにおける「階層の上昇」と現実は大きく異なる。インスタグラムのストーリーに投稿されるフォアグラや高級鮨、ブランドバッグの写真は、単なる承認欲求の産物にとどまらず、自らの価値を提示するための「武装」でもあった。だが、他人の金で構築された優雅な日常は、自前のキャリアや資産という裏付けを持たない。見せかけの華やかさが剥ぎ取られたとき、残るのは底知れぬ喪失感だけだった。