知財の自由化が進むなか、現場のクリエイターや同人作家たちはどのような現実に直面しているのでしょうか。SNSやクリエイターコミュニティ、知恵袋などの相談プラットフォームでは、「どこまでがセーフで、どこからがアウトなのか」を巡る切実な声が絶えません。
グラフィックデザイナーとして同人活動を行う30代の現場関係者は、近年の動向について次のように証言します。
「2022年のパブリックドメイン化直後は『これでプーさんのグッズが作れる』と沸き立ちました。しかし、ガイドラインを精査するうちに、多くの仲間が筆を止めました。原作のクラシックな線画を模写するのは問題ありませんが、少しでも可愛らしくデフォルメして赤系統の服を着せると、即座に通報対象になります。何より、コミックマーケットなどの規約や大手グッズ印刷所では『ディズニー関連に見えるものは一律受付不可』という安全マージンを取った運用が定着しており、二次創作の現場はむしろ慎重になっています」
また、登場キャラクターの登場時期による権利のズレもクリエイターを悩ませる要因です。例えば、親友のクリストファー・ロビン 著作権やコブタのピグレットは1926年の第1作から登場しているため2022年に保護が切れました。一方、人気キャラクターのトラである「ティガー(Tigger)」は、1928年刊行の続編『プー横丁にたった家(The House at Pooh Corner)』で初登場したため、米国のパブリックドメイン化は2024年1月1日までズレ込みました。ホラー映画の第1作にティガーが登場せず、2024年公開の続編『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』になって初めて虐殺劇に参戦したのは、この保護期間の計算をミリ単位で守った結果にほかなりません。