中つ国の世界を映像芸術の頂点へと押し上げた立役者といえば、ピーター・ジャクソン監督と名匠ハワード・ショアの存在を挙げないわけにはいかない。ジャクソンは、ハリウッド映画にありがちな甘美で整いすぎたコーラスを退け、喉の奥から絞り出すような粗野で力強い男声合唱に徹底してこだわった。洗練された美しさよりも、労働と戦いに明け暮れた種族のゴツゴツとした手触りを求めたのである。
映画音楽の巨匠ハワード・ショアは、その泥臭いボーカルをオーケストラの深部に組み込み、重厚なライトモティーフ(示導動機)として全編に張り巡らせた。哀愁を帯びた主題提示から、金管楽器が咆哮する戦闘曲へのドラマティックな変奏。ショアの手腕によって、耳慣れない異世界の民謡は、映画史に燦然と輝く不滅のテーマへと昇華した。