口角炎に悩む方の多くが陥る最大のトラップが、一般的なスティック型リップクリームへの過度の依存です。唇の端が切れると無意識に乾燥を防ごうとリップを塗り重ねがちですが、これがかえって傷口の治癒を妨げるケースが後を絶ちません。
口角という部位は、上下の唇が合わさる構造上、唾液が溜まりやすく常に湿潤な環境にさらされています。そこに油分の強いリップクリームを過剰に塗りたくると、患部が密閉されて皮膚がふやけ、組織が極めて脆い状態(浸軟:しんなん)に陥ります。さらに、市販のリップに含まれるメントールや香料、防腐剤などの刺激成分が、露出した真皮層に接触することで接触皮膚炎(かぶれ)を併発し、炎症が長期化してしまうのです。
もう一つの見落とせない要因が、違和感から無意識に行ってしまう「舌で患部を舐める行為」です。唾液に含まれるアミラーゼなどの消化酵素は、傷ついた角質層を容赦なく分解します。唾液が蒸発する際には周囲の水分まで奪い去るため、舐めれば舐めるほど乾燥と組織破壊が進むという過酷な悪循環が形成されます。口角炎が何週間も治らないと嘆く患者の約6割に、この「不適切な保湿剤の連用」と「舌舐め癖」が確認されるという皮膚科医の指摘もあります。