インターネットの検索窓に「ティファニー ネックレス メンズ」と打ち込むと、サジェストに「ダサい」「女物」といったネガティブなキーワードが並ぶことがあります。購入を検討している男性にとって、周囲からどう見られるかは極めて切実な問題です。ファッションジャーナリズムの現場視点から検証すると、この悪評が生まれた背景には明確な構造的理由が存在していました。
最大の要因は、1980年代後半のバブル期から2000年代にかけて日本中に定着した「ティファニー=オープンハート=若い女性へのプレゼント」という強烈な記号性です。かつてメンズアクセサリーといえば、無骨なシルバーブランドやクロムハーツのようなハードな意匠が主流でした。そのため、華奢でフェミニンな印象の強いブランドを男性が身につけることに対し、一部の層から「女々しい」「ナルシストっぽい」という反発が生まれたのです。
もうひとつの理由は、着用者のスタイリングにおけるミスマッチです。細すぎる40cm前後のチェーンを恰幅の良い男性がタイトにつけてしまったり、ストリート感のないスーツにフェミニンなペンダントトップをそのまま合わせてしまったりすることで生じる「ちぐはぐさ」が、ダサいという印象を増幅させていました。
この認識は2026年のLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)による買収と、ストリートカルチャーの寵児たちを巻き込んだ大規模なリブランディングによって完全に過去のものとなりました。ニューヨークの力強い建築や工業的エレガンスに着想を得たコレクションの展開により、男性が身につけるべき「力強さと気品を兼ね備えたラグジュアリー」へと鮮やかに脱皮を果たしたのです。