蜷川幸雄の稽古場といえば、妥協を許さない凄まじい熱量と緊張感で知られています。小栗旬もまた、その嵐のような指導を一身に浴びた俳優のひとりでした。
「下手くそ」「お前なんかいつでも代わりがいるんだ」といった容赦のない怒号が飛び交い、感情の乗らない演技に対しては履き物や小道具が投げられることも日常茶飯事でした。小栗は後年のインタビューでも、稽古期間中は毎日胃を痛め、プレッシャーに押しつぶされそうになりながら劇場に通っていた日々を明かしています。
だが、その厳しい叱責の根底にあったのは、俳優の内に眠る潜在能力を極限まで引き出そうとする蜷川氏の熱烈な愛情でした。小栗は理不尽とも思えるプレッシャーに決して腐ることなく、「何が何でも蜷川さんを唸らせてやる」という凄まじい反骨心で食らいつきました。怒号の嵐をくぐり抜ける中で研ぎ澄まされた集中力と瞬発力こそが、現在の小栗旬が放つ圧倒的な存在感の土台となっています。