英語イディオムとしての「with arms wide open」は、直訳すると「両手を大きく広げて」ですが、比喩的に「心から温かく歓迎する」「無条件で受け入れる」という意味を持ちます。洋楽ロックの名曲和訳を紐解くと、このフレーズがタイトルおよびサビに据えられた意図が鮮明に浮かび上がってきます。
楽曲の冒頭は、妊娠を知らされた瞬間の剥き出しの動揺から幕を開けます。
【Verse 1】
Well, I just heard the news today
It seems my life is going to change
I close my eyes, begin to pray
Then tears of joy stream down my face
(今日、その報せを聞いたばかりだ
俺の人生はこれから変わっていくらしい
目を閉じ、祈りを捧げ始めると
歓喜の涙が頬を伝い落ちていった)
スタップは「歓喜の涙(tears of joy)」と歌いながらも、続くヴァースでは父親になる責任の重さと恐怖を神に吐露します。「自分はこの世界を生き抜く術を教えられるだろうか」「どうやって愛を伝えればいいのか」。そして楽曲は、ロック史に刻まれるエモーショナルなサビへと到達します。
【Chorus】
With arms wide open under the sunlight
Welcome to this place, I'll show you everything
With arms wide open, now everything has changed
I'll show you love, I'll show you everything
(陽の光が降り注ぐ中、両手をいっぱいに広げて
この世界へようこそ、俺がお前にすべてを見せてあげよう
両手を広げて迎え入れるよ、今やすべてが変わったんだ
お前に無償の愛を注ぎ、世界のすべてを教えよう)
ここで歌われる「両手を広げて」は、親が子を抱きしめる物理的な抱擁であると同時に、傷だらけだった自分自身の過去を許し、新しく生まれてくる命に対して「お前の存在を100%肯定する」という無条件の受容の宣言です。父親になる曲として洋楽史に燦然と輝く理由が、この無垢で真っ直ぐな宣誓にあります。