掲示板やSNSなどのコミュニティを覗くと、準富裕層ネットの反応評判には「5000万円を達成しても驚くほど世界が変わらなかった」という冷めた声が目立ちます。実際に大手金融メディアのアンケートや知恵袋等の投稿を分析しても、贅沢な歓喜に沸く声は少数派です。
なぜ、上位数パーセントの資産を手にしながら金融資産5000万生活実感の変化はこれほど乏しいのでしょうか。当事者たちの生の声からその構造的要因が見えてきます。
「資産が1000万、3000万、5000万と増えても、食べるご飯の量が2倍になるわけでもないし、胃袋のキャパシティは変わりません。むしろ『減らしたくない』という防衛意識が働き、相場の調整局面では1日で数百万円が吹き飛ぶ画面を見て胃が痛むことすらあります」(40代・ITエンジニア手記より)
この現象は、心理学や行動経済学で言われる「ヘドニック・トレッドミル(快楽の踏み車)」の罠を無意識に回避している状態とも説明できます。富が増えたからといって生活レベルを引き上げてしまえば、快楽への慣れが生じ、より強い刺激を求めて出費が青天井に膨らんでしまいます。5000万円に到達した人々は、この罠の恐ろしさを本能的に察知しており、意図的に生活水準を固定しているのです。
では、彼らが手に入れた最も大きな変化とは何でしょうか。取材に応じた複数の準富裕層は、口を揃えて「日々の贅沢ではなく、心の中に生まれた分厚いクッションだ」と証言します。上司から理不尽な叱責を受けたとき、あるいは会社の先行きに暗雲が垂れ込めたとき、「最悪の場合でも、自分には数年間無収入でも生き延びられるだけの資産がある」という事実は、計り知れない心の防壁となります。