多くのファンが疑問を抱き続けたのが、「なぜ本名である『能年玲奈』を捨て、ひらがな表記の『のん』に改名しなければならなかったのか」という点です。この経緯には、日本の芸能プロダクションが長年敷いてきた専属マネジメント契約の構造的問題が存在します。
発端は2015年、当時の所属事務所であるレプロエンタテインメントとの契約関係に軋轢が生じたことでした。報道各社の取材データによると、当時の彼女は自身のキャリア形成や演じたい役柄に関するマネジメント方針に強い違和感を抱いており、演技指導を行っていた女性演出家とともに個人事務所を立ち上げました。これが事務所側から「専属契約違反」とみなされ、事実上の活動休止状態へと追い込まれます。
契約期間満了を迎えた2016年、彼女は再出発を図ろうとしましたが、立ちはだかったのが「本名=能年玲奈」の商標問題でした。芸能マネジメント契約書の条項において、「退社後も事務所の許諾なく芸名を使用して芸能活動を行ってはならない」という競業避止・商標権に関する取り決めが存在していたためです。本名でありながら、その名前を使って仕事をすることが法的リスクを孕むという異常事態に直面した彼女は、係争による長期の活動停止を回避するため、あえて本名を封印し「のん」として活動することを決断しました。