SNSや大手知恵袋などのコミュニティを分析すると、多くの人々が「自分の本音が分からず、他人の言動に過剰に同調してしまう」という苦悩を吐露しています。2020年代半ば以降、タイパ(タイムパフォーマンス)や効率主義が極限まで加速した結果、感情を味わうプロセスそのものが「非効率な無駄」として切り捨てられてきた背景があります。
実際、テレビドラマ『Tシャツが乾くまで』の放送時には、喫茶店の店員・直人(高橋文哉)が放った飾らない一言に対し、SNS上で「視聴者の心の声を代弁してくれた」「胸のつかえが取れた」と大きな反響が巻き起こりました。自らの感情を言葉にできず抑圧している人が多いからこそ、フィクションの登場人物や他者の率直な言葉に激しく共鳴し、代理でガス抜きを求める現象が顕著に現れています。
取材現場やユーザーの生の声からは、以下のような切実な実態が浮かび上がります。
「会社では常に『イエス』と答え、プライベートでも友人の行きたい場所に合わせ続けた結果、自分が本当は何を食べたいのか、何色を好きなのかすら思い出せなくなった」(30代・IT企業勤務女性の手記より)
「周囲からは順風満帆に見えていたはずだが、内面では絶えず心の声が聞こえるような強いストレスと焦燥感に追われ、ある日ベッドから起き上がれなくなった」(20代・営業職男性の告白より)
これらの事例が物語るのは、周囲の空気を優先しすぎるあまり、自己と他者の間に引くべき「心理的バウンダリー(境界線)」が崩壊してしまっている実態です。