読者が最も気をもんでいるのが、主人公である「パン子」こと飯野朋子(30歳)と、自転車店を営む年下の青年・高橋遼平(26歳)がどのような結末を迎えるのかという点です。物語の根底にあるのは、お互いの欠落を埋め合う依存関係ではなく、対等な個として自立していく成長のプロセスです。
東京から岐阜の会社へ配属され、上司からのセクシャルハラスメントや同僚たちの理不尽な押し付けに断り切れず息を詰まらせていたパン子。そんな彼女の前に現れたのが、金髪で見た目は威圧的ながら、他人の痛みに誰よりも敏感な遼平でした。遼平が作った温かいご飯を食べ、彼の裏表のない言葉に触れることで、パン子は少しずつ自分の本音を口にする勇気を取り戻していきます。
原作の中盤以降では、読者の胸を締め付ける大きな試練が描かれます。職場環境の悪化に耐えかねたパン子が下した「退職」という決断、そして何より根深い「実母・さとこ」との精神的葛藤です。娘を自分の所有物のように扱い、無意識に罪悪感を植え付けてコントロールしようとする母親に対し、パン子は遼平の存在を心の支えにしつつも、最終的には自分自身の意志で立ち向かい、物理的・精神的な距離を置く決意を固めます。
一方の遼平もまた、自分を育ててくれた最愛の祖父との別れや、過去の家庭環境に対するわだかまりを抱えていました。二人はただ甘い言葉を掛け合うだけでなく、みっともない感情や弱音をさらけ出し合いながら絆を強固にしていきます。物語の最終回に向けた潮流において、二人の関係は「結婚」という世間的な形式に囚われること以上に、「互いの人生の操縦桿を互いに委ね合える、かけがえのないパートナーシップ」という確固たる結末へと向かっています。