猫に顔を舐められたときの、あのやすりのような感触。その正体は、舌の表面にびっしりと並ぶ「糸状乳頭(しじょうにゅうとう)」と呼ばれるケラチン質の微細な突起だ。毛づくろいの際にブラシの役目を果たすだけでなく、骨から肉を削ぎ落とす野生時代の名残でもあるこの器官は、口腔内の衛生状態を映し出す精密なセンサーでもある。
糸状乳頭が唾液を効率よく被毛に行き渡らせる一方で、口内にトラブルを抱えるとグルーミングの頻度が急激に落ちる。被毛が毛玉だらけになったり、前足の毛がよだれで茶色く変色したりするのは、舌を動かすことすら苦痛であるという警告にほかならない。舌の動きひとつにも、重大な臨床的サインが刻まれている。