松阪大映の営業当時の様子は、まさに昭和の大衆文化そのものでした。映画館の正面には、手描きの巨大な映画看板が高々と掲げられ、街行く人々の目を引いていました。絵師の筆による迫力満点の俳優の肖像は、映画への期待感を煽る街路のランドマークでもありました。
当時、松阪大映で上映された作品には、日本映画史に燦然と輝く名作が並びます。
- 勝新太郎主演『座頭市』シリーズ・『悪名』シリーズ:豪快な殺陣と人間味あふれるドラマで、立ち見が出るほど場内を熱狂させました。
- 市川雷蔵主演『眠狂四郎』シリーズ・『忍びの者』シリーズ:端正な美貌と華麗な剣さばきが女性客をも惹きつけ、長蛇の列を作りました。
- 『ガメラ』シリーズや『大魔神』三部作:子どもたちの圧倒的支持を集め、夏休みや冬休みの興行では親子連れでロビーが溢れかえりました。
- 京マチ子や若尾文子らの主演文芸・現代劇:大人の観客層を魅了し、映画が単なる娯楽を超えた文化発信地であったことを証明しています。
館内には紫煙が漂い、木製座席のきしむ音、売店で売られるアイスクリームやサイダーの香り、そしてフィルム映写機がカタカタと回る独特の駆動音が響いていました。スクリーンに映し出される光と影に観客全員が一喜一憂した空間は、昭和レトロな松阪の原風景として今も語り継がれています。