ビジュアルの美しさだけにとどまらないのが、吹石一恵という表現者の真骨頂だ。2000年代に入ると、彼女は本格派女優としての評価を確固たるものにしていく。鬼才・園子温監督による異色の映画『紀子の食卓』で主役の紀子役を熱演し、観客と批評家を唸らせた。内面の葛藤と狂気を繊細かつ大胆に表現した演技は、従来のイメージを完全に覆し、日本映画界に強烈なインパクトを残した。
さらに、NHKの連続テレビ小説やドキュメンタリー番組のナレーションなど、重厚な作品群でも才能を発揮。落ち着いた声質とブレのない演技力は、作品に深い奥行きを与える存在として高く評価された。恵まれたスタイルを持ちながらも、役に誠実に向き合う真摯な姿勢が、息の長いキャリアの礎となったのだ。