2009年8月16日、世界中の陸上ファンが息を呑みました。ベルリン世界陸上の男子100メートル決勝で、ウサイン・ボルトはみずからが前年の北京五輪でマークした世界記録(9秒69)を0秒11も縮める9秒58(追い風0.9m)でフィニッシュラインを駆け抜けたのです。通常、100メートル走における0.1秒の更新は何十年もの歳月を要するプロジェクトとされていただけに、一気に0.11秒を削り取ったこの快挙は陸上界の歴史を根底から覆しました。
このレースにおけるボルトの走りをデータで振り返ると、まさに異次元の数値が並びます。スタートから60〜80メートルの20メートル区間では、なんと1秒61を記録。これを換算すると100メートル走最高時速は44.72kmに達しており、人間が自らの脚だけで出した速度としては史上最速の瞬間でした。